シェーグレン症候群(SS)

シェーグレン症候群とは

シェーグレン症候群とは、涙腺や唾液腺などの外分泌腺に白血球の一種であるリンパ球が攻撃することにより炎症が起こり、その結果、外分泌腺の機能が低下して様々な症状を引き起こす病気です。
炎症性の病変は、腺外臓器(腎・肺・甲状腺・皮膚など)に現れることもあります。

シェーグレン症候群は、40〜60歳代の女性に多く、男女比は1:14となっています。
原因は未だはっきりとは分かっていませんが、遺伝的な要因に、環境要因が影響していると考えられています。

シェーグレン症候群の症状

シェーグレン症候群の主な症状は、涙腺や唾液腺が障害されることにより起こる目の乾燥症状や口腔内の乾燥症状です。

@乾燥症状

1)眼
涙腺が障害を受け、涙がでにくくなることにより目が乾燥して様々な症状が現れます。
・目が痛い ・目がゴロゴロする ・目が疲れる  ・目が痒い ・なにか異物感がある など
2)口腔
唾液腺が障害を受け、唾液がでにくくなることにより口腔内が乾燥して様々な症状が現れます。
・口が渇く ・食べ物を飲み込みにくい ・味覚異常 ・虫歯になりやすくなった など
3)鼻腔
鼻腔内の粘液がでにくくなることにより鼻腔内が乾燥して様々な症状が現れます。
・鼻が乾く ・鼻血がでやすくなった など
4)膣
膣内に潤いを与えているバルトリン腺が障害を受けることにより膣内が乾燥して様々な症状が現れます。
・膣炎 ・性交時違和感 など

A関節症状
他の膠原病でも起こりますが、シェーグレン症候群でも、関節痛や関節炎を起こすことがあります。
多くの場合、1ヶ所ではなく、複数の関節が痛む症状があらわれます。

B耳下腺・涙腺症状
唾液腺や涙腺が障害を受けることにより、耳下腺や涙腺が腫れることがあります。
耳下腺が腫れる場合は、両側が腫れる場合が多いです。

C臓器症状

1)肺・気管・上気道
間質性肺炎を起こしたり、気道や気管の乾燥により、咳がでるようになったり、気管支炎などを起こすことがあります。
2)胃
胃液の分泌が低下して、そのために胃炎が起こることがあります。
3)腎臓
間質性腎炎を引き起こすことがあります。
間質性腎炎とは、尿細管間質性腎炎とも呼ばれ、腎臓にある尿細管やその周囲の組織が炎症を起こす病気です。
4)肝臓
原発性胆汁性肝硬変や自己免疫性肝炎が合併することがあります。
Dその他の症状
レイノー現象が現れたり、皮膚に辺縁がすこし盛り上ったリング状の紅斑(環状紅斑)が現れたり、血管炎が起こることがあります。

※レイノー現象
寒冷時などに手足のの血流が悪くなり指先が青白くまたは紫色となり、痛みやしびれを伴い、血流の流れが回復すると、充血して赤くなる現象です。
シェーグレン症候群の約3割のかたに見られます。

シェーグレン症候群の治療法

現在のところ、シェーグレン症候群自体を治す治療は残念ながらありません。

そのため、シェーグレン症候群の治療は、対症療法が中心となります。

主な治療
目の乾燥症状

@涙の分泌を促進させる
涙の分泌を促進させる治療として、ステロイド薬により涙の分泌促進がもられることがあります。
また、日本では適応がありませんが、セビメリンという薬が分泌の促進に効果があるとヨーロッパでは認められています。
A涙の補充
人口涙液や点眼薬を用いて涙の代わりとして用います。
点眼薬の場合、基本的に防腐剤が使用されており、1日に何回も使用すると角膜を傷つけてしまうことがあります。
そのため、点眼薬後に生理食塩水などで洗い流したり、防腐剤の入っていない使い捨てタイプの点眼薬を使用するなどの対策が必要です。
B涙の蒸発を防ぐ
涙の蒸発を防ぐために、眼鏡のふちにカバーがついてるドライアイ専用の眼鏡があります。
C涙の排出を低下させる
鼻側のまぶた(上下)にある涙点(涙の排出口)を閉じて目に涙が溜まるようにして乾燥を防ぎます。
この治療法には、主に涙点をプラグを差し込んで塞いだり、手術にって閉鎖する方法があります。

口の乾燥症状

@唾液の分泌を促進させる
唾液の分泌を促進させる治療薬として、セビメリンやピロカルピン、漢方薬などが用いられます。
薬以外にも、シュガーレスガムやレモン・梅干など酸味によって唾液分泌を促す方法もあります。
A唾液の補充
唾液の補充には、人工唾液を用います。
B虫歯予防
唾液には、口腔内の殺菌や保護をする働きがあります。
そのため、唾液の分泌が減少して口腔内が乾燥すると、虫歯ができやすくなります。
口腔内を清潔に保つために、うがいやブラッシングなどをしっかりおこなうことや、虫歯の原因になる糖分を控えることも大切です。

その他の症状
関節痛や関節炎には非ステロイド系消炎鎮痛剤が用いられます。

※対症療法とは
対症療法とは、病気自体の治療ではなく、その病気により起こる症状を和らげる治療です。

シェーグレン症候群における検査データ

血球検査
抗体検査(陽性を示すもの)
・抗核抗体 ・抗SS-A抗体 ・抗SS-B抗体 ・抗RNP抗体 ・LE因子 など

その他検査
1)蛍光色素試験
フルオレセイン液と呼ばれる染色液を点眼し、角膜の障害を調べる検査です。
涙液分泌低下によって角膜が障害されると、フルオレセインで染色されます。

2)ローズベンガル試験
ローズベンガル液と呼ばれる染色液を点眼し、角結膜の障害を調べる検査です。
涙液分泌低下によって角結膜が障害されると、ローズベンガル液で染色されます。

3)Schirmer試験(シルマーテスト)
ろ紙を下まぶたに当てて涙液量を測定する検査です。
5分間で5mm以下を陽性所見としています。

4)ガム試験
ガムを10分間噛んでいただき、その間に出てきた唾液量をみる検査です。
10ml以下を陽性と判定します。

5)Saxonテスト(サクソンテスト)
口の中にガーゼを含ませて2分間噛み、ガーゼに唾液を吸収させ、ガーゼの重さを量り、唾液分泌量を計測する検査です。
2分間で2g以下を陽性と判定します。 

シェーグレン症候群の診断基準

シェーグレン症候群診断基準(1999年:厚生労働省改訂基準)

1・生検病理組織検査で次のいずれかの陽性所見を認めること

  • a)口唇腺組織で4mm2当たり1focus(導管周囲に50個以上のリンパ球浸潤)以上
  • b)涙腺組織で4mm2当たり1focus(導管周囲に50個以上のリンパ球浸潤)以上

2・口腔検査で次のいずれかの陽性所見を認めること

  • a)唾液腺造影でStageT(直径1mm未満の小点状陰影)以上の異常所見
  • b)唾液分泌量低下(ガム試験にて10分間で10ml以下または、Saxonテストにて2分間で2g以下) があり、かつ唾液腺シンチグラフィーにて機能低下の所見

3・眼科検査で次のいずれかの陽性所見を認めること

  • a)Schirmer試験で5分間に5mm以下で、かつローズベンガル試験で3以上(van Bijsterveldスコア)
  • b)Schirmer試験で5分間に5mm以下で、かつ蛍光色素試験で陽性

4・血清検査で次のいずれかの陽性所見を認めること

  • a)抗Ro/SS-A抗体陽性
  • b)抗La/SS-B抗体陽性

上記4項目のうち、いずれか2項目以上を満たせばシェーグレン症候群と診断する。

生活上の注意点

シェーグレン症候群は、症状が軽くなったり、悪くなったりを繰り返して慢性的な経過をたどることが多い病気ですので、日常生活に気をくばることが大切です。

一般的に、疲れやストレスを貯めず、十分な休養をとり、バランスの取れた食事をし、規則正しい生活を心がけましょう。
また、外出時には、紫外線対策として、帽子・長袖や長ズボンを着用し、顔には日焼け止めクリームを塗るのも効果的です。

シェーグレン症候群の場合、口腔内の乾燥により、虫歯になりやすかったり、細菌が繁殖しやすいので、食後のはみがきやうがいをしっかりと行ないましょう。
また、口腔内乾燥のため、口腔内に痛みがあったり、物を飲み込んだりしにくいので、香辛料などの刺激物を避け、乾燥している食物は、水分に浸したり水分と一緒に摂取するように工夫しましょう。

膠原病など慢性的な経過をたどる病気では、悪い方へと考えがちになってしまいがちです。
そうならないためにも、趣味を持ったり、自分一人がこの病気に罹っている訳ではない事を自覚して、自分ひとりで悩まないで、悩みを相談できるヒトを見つけることが必要です。

シェーグレン症候群と妊娠

シェーグレン症候群を患っていても、妊娠・出産は十分に可能です。
但し、血液中に抗SS-A抗体をお持ちの場合、この抗体が赤ちゃんに移行して治りにくい房室ブロックという不整脈を起こしてしまうことがあります。

また、シェーグレン症候群が原発性か二次性かによっても注意する点が異なりますので、主治医とよく話し合い、計画的に妊娠・出産するようにしましょう。

シェーグレン症候群の遺伝と予後について

シェーグレン症候群の家庭内発病率は約2%であり、このことからも、身内にシェーグレン症候群のかたがいても、発病しないのが普通ですのであまり神経質になる必要はありません。

予後についてですが、シェーグレン症候群は通常、症状に波があり、よくなったり悪くなったりを繰り返して慢性的な経過をとり、急激に症状が悪化することはほとんどありません。

10年以上経過しても、病状が今とかわらない方が半数以上で、3割くらいの方が徐々に乾燥状態が悪化したり、新しい病変が現われたりします。
またまれに、病状が急激に悪化することがあります。